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性産業の2022年以降の考察


熱力学の第二法則では「エントロピー増大の法則」というものがあるんですが、物理的な詳細を端折ると、ここで僕がいわんとしていることは、エネルギーの方向性の不可逆性、つまりそのエントロピーが最大になったときのエネルギーが決して元に戻ることがないという法則のことで、ここでは文化の成長がある一定のところで成長が停滞してしまうということを「エントロピー増大の法則」から引用して取り上げたいというわけです。
冷たい水と熱いお湯を1つの水槽に注いで真ん中で仕切ります。その仕切をばっと取り除くと冷水と熱湯は激しく混ざります。氷になる寸前のほぼエネルギーを保持しない冷水と、気体になる寸前のエネルギーが最大化した熱湯にはエネルギーの落差があるので、高いエネルギーが低いエネルギーに移動しようとするという物理的な法則によってエネルギーの流れが起きます。それにともなって仕切りを取り除いた水は激しい混乱状態になります。激しい対流が起こり、場合によっては小さな爆発が生じたり容器から水がはみ出たりしますが、エネルギーはやがて弱まってゆき、全体としてぬるま湯になるわけです。放っておけばエネルギーは均衡し、静かなほどほどのぬるま湯になります。この現象は何かしらの社会や文化の現象に例えられることがあります。厳しい道徳律で律されてきた性があったとしたら、その性が開放されたあかつきには、激しいエネルギーのぶつかり合いが起こるというわけです。その状態や過程が文化の醸成が行われる過程のもっともおもしろい時期に例えられるというわけです。

AVマーケットの縮小

戦後ポルノ産業は右肩上がりで成長を遂げてきました。2019年あたりで発表されている2016年前後の調査(*1)ではポルノ産業はアダルトグッズなど周辺グッズも含めて推計46兆9,763億円でしたが、その後現在までの2022年までにマーケット的には頭打ちになっているらしいです。日活ロマンポルノを皮切りにAVビデオ・ AV-DVDと発展を遂げ現在では殆どの動画がオンライン上で閲覧可能になり、ポルノ業界はほぼデジタイゼーション(Digitization)が完了したように見えるわけですが産業としてエントロピー最大という状態に陥っています。かつてこれを似た減少が現代美術(コンテポラリーアート)でも見られました。近代絵画、例えば印象派やキュビズムなどから著しく自由な方向に発展した美術が80年代後半・90年代前半にて何をやってもおもしろくないという状態になりました。美術自体が自己言及的なテーマを扱うようになり開放しているのか閉鎖的になっているのかわからない状態になったわけです。「この美術作品の意味がわからない」といった経験をした方々も多くおられると思います。まさにポルノ産業もそういった袋小路に追い込まれた状態になっているというわけです。どんなスケベな企画や映像ももはやエントロピー最大であり、むしろお笑いの方向や客観的にみると全くスケベでもなんでもない物語にならざる得ないという状況です。
AV業界低迷の背景と、AVの将来性について


*1 2016年02月10日 アダルト向け市場に関する調査結果2016ー 矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press/download.php/001498 (pdfファイルがダウンロードされます)



2022.04.05